通常の患者さん(健保請求)が入院している場合で、その患者が他医療機関を受診した場合というのは、入院中の医療機関が入院基本料を減算しなければいけません。
当然の事であり、入院の入力を行っている医事職員であれば知っていて当たり前の知識となります。
ただ・・・
これが労災の患者だった場合がどうでしょうか?
労災の病名に対して入院基本料を算定しており、その患者が労災とは関係のない疾患で他医療を受診した場合というのは労災も入院基本料を減算しなければいけないのでしょか?
本記事では医療事務員さん向けに、実際の私の病院でもそういった事例があったので紹介していきます。
目次
労災と関係ない疾患で他医療機関を受診した場合
私の病院でも、労災患者が入院しており、労災病名と関係のない傷病で他医療機関を受診することになりました。
通常の健保請求通りであれば、他科受診扱いになるので入院費を減算するところですが、正直なところ労災の手引きやテキストにもどうすればいいのか記載がなかったため、私にはわかりませんでした。
なので、この時はセオリー通り入院料を減算してしまいました。
しかし、これは間違った算定方法のようでした・・・
正しい算定方法
労災患者の他科受診についての正しい算定方法については、『平成28年9月28日基補発0928第1号 医療関係質疑応答集の一部改定について』の質疑応答の中にQ&Aがありました。
Q12 入院中の患者の他医療機関への受診に係る健康保険の取扱いとして、入院している患者が他の保険医療機関で治療を受けた場合には、入院医療機関の入院料等の基本点数を10%、20%又は40%を控除した点数により算定することとなっているが、労災保険において、この取扱いは適用されるのか。
A.労災保険においては、入院中の被災労働者の治療に関して、他医療機関での診療が必要となり、当該入院中の被災労働者が他医療機関を受診した場合(当該入院医療機関にて診療を行うことができない専門的な診療が必要となった場合等のやむを
得ない場合に限る。)は、健康保険の取扱いによらず、入院医療機関は入院料の基本点数を控除せず全額算定できる。なお、この場合において、他医療機関は当該診療に係る費用(「医学管理等」、「投薬」、「注射」等)を健康保険の取扱いによらず全額算定できる。
厚生労働省からこのようにしっかりとした回答があったようです。
つまり、労災患者が他科受診をした場合、どんな場合であっても入院料は減算してくてもよい!!ということになります。
健保請求とはだいぶ異なってきますので注意が必要です。
また、この算定方法については覚えておかなければ、算定間違いしてしまう項目となってしまいますので、覚えておいたほうがいいでしょう。(今のところ、医事コン関係も保険種類においての自動算定機能というのはなさそうです。)
自賠責はどうなる?
ちなみにですが、自賠責(新基準)は労災に準拠した算定方法となっていますので、算定方法としては入院基本料は減算しないということになります。
あと、第三者請求の場合は、通常の健保請求と同じ扱いなので、減算しなければいけませんよ。
自賠責については(労災もですが)、歯科を受診することもしばしばあるので、こちらも参考ください。
減算しても査定はされない
ちなみに、私の病院では過去に入院料を減算して請求を行っていましたが、その後、特に連絡や査定等もなかったので、これはこれでよかったのかもしれません。
もちろん、病院としてはマイナスになってしまうので注意してください。
まとめ
労災の他科受診 ⇒どんな場合も入院料は減算しなくてもよい
自賠責の他科受診 ⇒どんな場合も入院料は減算しなくてもよい
健保請求(第三者) ⇒入院料の減算をする
といった感じになります。
つくづく労災の請求といのは特殊だと実感させられる部分ですね。
知っていなければ、私のように減算をして算定することになってしまい、病院としてマイナスになってしまいますので、頭の片隅にでも覚えておくといいかもしれませんね。
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