
限度額適用認定証とは、入院や外来診療・調剤薬局等での医療費の支払額が、国が定める自己負担限度額を超えて高額となるとき、窓口での支払を法定の自己負担限度額までにとどめることができるもの。
限度額認定証とは簡単に言えば、患者さんは一定の金額以上は医療機関(病院やクリニック)に支払わなくてよい。
医療機関で会計するときに支払う金額が少なくすみますよ。というものです。
ただ、他にも高額療養費とかっていうワードも同じような意味合いで出てきたりして混乱する方も多いと思います。
なんとな~く分かってるという人も多いと思いますが、実際に数字を入れて計算してみたら分かりやすいかもと思ったので、例を挙げて計算してみました。
また、高額療養費と限度額認定証の違いについても説明していきます。

目次
限度額認定証を会計時に提示した場合の計算例
さっそく、具体例を出して解説です。
例①:一般患者(70歳未満)が、回復期に入院、運動器リハを月250単位施行した場合【平成28年度点数】
(医療費のみ)
回復期リハビリテーション病棟入院料1
体制強化加算
リハビリテーション充実加算 2,251点 × 30日
運動器リハビリテーション料(1) 185点 × 250単位
総点数 113,780点 になります。
※入院する病棟や状況によって点数や金額は異なってきますが、あくまで平均的に予想される点数で例をあげてみました。
医療費については、1点=10円で計算されます。
なので、医療費だけで、113,780点×10円=1,137,800円かかっているという計算になります。
ですが、全額を払うという機会はほぼゼロです。
なぜなら、患者さんは健康保険証を持っているので、保険証の負担割合に応じて医療機関に自己負担額を払うかたちになるからです。
一般的に協会けんぽを持っている場合は、3割負担なので、1,137,800円の3割分で341,340円が病院窓口で支払わなければいけない金額になります。
年齢によって負担割合は1割や2割と変わったりしますが、ここでは3割として計算しています。
こういったことをふまえて、限度額を使った場合と使わなかった場合の差額を比べてみると…
- 限度額適用認定証提示なしの場合 341,340円
- 限度額適用認定証提示ありの場合 80,843円(※限度額区分『ウ』で計算)
なんと窓口負担の金額が約26万円程変わってきます。
この差は大きいですね。とてもじゃないけど、

私は払えないです・・・
こうなってくると実際に患者さんも支払えない、というケースが出てくることが予想されます。
そうなると入院費を滞納する人が増えちゃいますよね。
そうならないためにも、まず入院するときに軽く相談員や受付から限度額の案内をしてくれる医療機関が多いです。
事前に説明することで未収対策にも繋がっていきますからね。
限度額認定証の提出は強制ではなく、患者本人の任意です。
患者さんがよく勘違いすること
患者さんで入院費とか支払うときに勘違いされて、よく言われるのは
『負担は80,100円じゃないの?』とか
『44,400円だと思ってた』とか言ってきます。
結構多いのが、限度額の金額を固定金額だと思っている患者さんです。
実際は個人の所得によって異なってきますから、一概に「あなたはいくらまでです」って説明することができないんですよね。
医療機関側としては、限度額適用認定証が発行されてから入院費の計算をしていく流れになります。
なので、まずは限度額認定証の発行が最優先事項になってきます。
限度額適用認定証と高額療養費の違い
よく混合して認識されてしまうのが、限度額適用認定証と高額療養費です。
仕組みとしては両方とも
“患者さんの金銭的負担を減らす”ということが目的なので、ほぼ同じようなものと思っていても問題ありません。
ただ、注意して覚えておいておかないといけないことがあります。
それはいつお金を支払うかです。
簡単にですが、両方のお金の流れをまとめてみました。
限度額適用認定証
医療機関に限度額認定証を提示することで、医療機関での窓口支払いは限度額まででOK
一番初めに出した例①でいくと、支払い額は80,843円になります。
支払いに関しては、この金額を医療機関に支払う、これでおしまいになります。
入院が長引くことが予想される場合というのは、その分、毎月の入院費を支払わなければいけいないので、患者の負担が大きくなります。
なので、そういった場合に月々の窓口での支払いを少なくするために、この限度額認定証を提出するケースが多いです。
特に、高齢者は働いておらず、年金暮らしなので、該当される方は限度額認定証を出しておいた方が窓口支払いの負担が軽減されます。
また、協会けんぽにいたっては、申請・提出が必須といっても過言ではないものとなっています。
提出しなければ、上記の例①でもあげたように、何十万という大金を一度に窓口で支払いをしなければいけなくなりますからね。
限度額適用認定証については、病院に提出さえしていれば病院のほうで計算し請求処理までしますので、患者さんにとっては手間が軽減されて楽だと思います。
注意点としては、協会けんぽなどは、申請してから交付までに1週間ほどの期間を要します。なので、短期の入院のときなどは、速攻で手続きに行わなければ発行が間に合わないケースもあります。
高額療養費
医療機関の窓口で、まず一部負担金を全額支払います。
例①でいくと341,340円を病院で支払います。
その後、自分で保険者(保険証を発行してるところ)へ高額療養費の申請手続きを行います。
申請してから約2週間前後の期間で、患者さんへ341,340-80,843=260,497円が戻ってきます。
高額療養費制度は、自分で払い戻しの手続きを保険者に行わなければいけません。
また、窓口での支払いが高額になるので、お金の準備やら負担が増えてしまうというデメリットはあります。
高額療養費のイメージとしては払い戻しするような感じです。
使用するタイミングとしては、限度額認定証を使いそびれた場合や入院期間が短期間が予想される場合とかです。
限度額まで達しなさそうであれば、とりあえず限度額は申請せずに、超えた場合にのみ高額療養費の申請をするという手段もあります。
申請の手続きも面倒くさいですからね。
2つの違いをまとめると、限度額と高額療養費を比較したときの支払い総額としてはどちらを利用したとしても最終的には同じということになります。
まとめ:総支払額は同じで使うタイミングが違うだけ
- 限度額認定証:病院での支払いの上限が一定額まで
- 高額療養費:病院で治療費すべてを一旦支払う。その後、限度額を超えた分を払い戻し
大きな違いは、手続きを先にするか、後からするかですね。
基本的には、どこの医療機関も限度額認定証を利用することをお勧めしていると思います。
入院患者さんとかでレセプト請求をした後に、限度額を出してなかったなんてときには高額療養費を案内してあげることができますよね。
そういった感じで、使い分けていくのも、わかりやすいのではないかと思います。
本記事が少しでも参考になれば幸いです。それではまた~