こんにちは、医療事務員のアドバーグです。
今回は「入院費の超基本と入院費がお得になる情報」という内容でお伝えしていきたいと思います。
この記事を見ることで
見るメリット
-
入院費の基本的な仕組みが簡単に理解できて、
-
少しでも入院費の負担を減らすお得な情報
を知ることができます。
自分や家族が入院して
「入院費ってどれぐらいかかるんだろう?」
とか
「入院費が払えないかも…」
とか
「高い入院費を払ったけどほんとにコレ正しいの?払いすぎたんじゃないかな?」
と、初めての経験で不安を抱えている人も多いかと思います。
または、
そんな方も多いと思います。
私自身、医療事務として病院で働いていても
と思うのが本音です。
それぐらいややこしい制度なので、いままで健康で入院とかに縁がなかった人にとっては、より分かりにくいものだと思います。
そこで、この記事では、分かりにくい入院費を
「実際に病院で入院費の請求を行っている現役の医療事務員が入院費についてわかりやすく解説」
していきたいと思います。
また、記事の最後のほうには入院費を少しでもお得にする情報も詰め込んでいますので、最後まで見ていってくださいね。
※あと本編に入る前に前提をお伝えしておきます。
少しでもわかりやすくお伝えするために難しい表現は避けますので「厳密にはおかしい」という部分があるかもしれませんが、あくまで「入院費の仕組みはこうなっているんだ」と基本的な流れや仕組みを理解してもらえればと思います。
それではやっていきましょう!
▼動画でも解説していますので参考にされてくださいね▼
【かんたんに理解できる!】そもそも入院費とは??
最初に、そもそも入院費とは?ということについて説明します。
入院費の全体的なイメージをつかむことができれば、
ではさっそく、説明しますね。
重要ポイント
患者さんがイメージする入院費(つまり患者さんが支払う金額)は大きく3つに分けられ、それぞれを合計した金額が「入院費」として請求される金額になります。
入院費の計算方法の簡単な考え方としては、
医療費(診療点数)+食事代+自費分=入院費
といった感じになります。
それぞれ簡単に説明していきますね。
その1:医療費(診療点数)とは
医療費(診療点数)とは、
いわゆる世間がイメージするような手術や検査、処方や注射、リハビリといった医療行為にかかったものです。
ちなみに、入院するだけで「毎日、入院基本料が発生する」ので、上記のような治療を何も受けなくても、医療費は発生します。
この記事でも後から詳しく解説しますね。
その2:食事代とは
次に食事代です。
これはシンプルに食べたご飯代金です。1食単位で請求します。
例えば、一食460円で1日3食を食べたとしたら、1日あたり1,380円の食事代がかかる、といった感じです。
その3:自費分とは
次に自費分です。
最初に説明した医療費と食事代以外で、入院に必要最低限、「以外のもの」です。
例えば
医療とは関係のない個室代や病衣のレンタル費用、テレビ視聴代金等です。
自費分は極端な例えをすれば「車のオプション」のようなものです。車のオプションが無くても車は走れるけど、「あったら便利なもの」といった感じです。
これら3つを合計した金額がいわゆる「入院費」と言われるものです。
もう一度、入院費の計算式をお伝えすると
医療費(診療点数)+食事代+自費分=入院費
になります。
繰り返しですが、入院費の全体的なイメージをつかむことができれば、ネットなどで調べている断片的な情報も「全体の中のここの部分を説明しているのか~」とグッと理解もしやすくなりますよ。
それでは、医療費と食事代、自費分についてかかる費用について、それぞれについて詳しく解説していきますね。
医療費(診療点数)について詳しく解説
いわゆる世間がイメージするような手術や検査、処方や注射、リハビリといった医療行為にかかったものです。
ちなみに、
入院するだけで「毎日、入院基本料が発生する」ので、上記のような治療を何も受けなくても、医療費は発生します。
医療費の計算方法は、外来患者さんと同じように、保険証の負担割合に応じて患者さんから窓口で一部負担金を徴収、会計します。
ポイント
一般的に出回っている情報で、多くの人が聞いたことがある「高額療養費制度」や「限度額適用認定証」はこの医療費の部分になります。
たとえば、手術をして1か月まるまる入院する場合、1か月あたり医療費である診療点数が10万点を超えてくることもあります。
診療点数は1点あたり10円で計算しますので、全額負担でいえば1か月あたりの医療費だけで実は100万円かかっている、ということになります。
この診療点数が10万点かかった例えの場合、保険証を利用したとき、患者さんの医療費の負担としては、このようなイメージになります。
例えば:医療費が10万点の場合
(※ここでは70歳以上の限度額が自動計算される現物給付は考えない)
・3割負担 → 300,000円
・2割負担 → 200,000円
・1割負担 → 100,000円
ここだけ聞くと
と思う方も多いと思うので、
ここでは
「入院費って実際はとても高いよ!保険証を使うだけでかなり安くなっている!」
ということだけ覚えてもらえたらと思います。
と思っています。
※このあと限度額適用認定証の説明をしますが、さらに患者さんの負担は安くなります。
【払えないなら必須】限度額適用認定証について
次に限度額適用認定証についても補足しておきます。
本来であれば、患者さんは一か月の医療費だけで上記の金額を支払わなければいけません。
保険証を適用されて安くなったとはいえ、それでも現実的にとても高いです。
払えない金額ではないかもしれませんが…
毎月こんな高額なお金を支払えない、不安を抱えている人は多いのではないでしょうか。
そこで登場するのが「限度額適用認定証」です。
個人の所得に応じて、一定金額以上は医療機関の窓口で支払わなくてもいいですよ。という制度です。
例えば、先ほど10万点の金額に限度額を当てはめてみると
・協会けんぽ(3割負担) → 300,000円
※区分「ウ」の場合→ 87,430円
・70歳以上75歳未満(2割負担) → 200,000円
※区分「一般」 → 57,600円
・後期高齢者75歳以上(1割負担) → 100,000円
※区分「低所Ⅱ」 → 24,600円
最初の金額に比べるとだいぶ安くなるのがわかってもらえたのではないでしょうか?
ちなみに協会けんぽさんのホームページを参考にさせてもらうとこんな感じです。
引用:協会けんぽ
ここまで聞いて
とか
という人は
「限度額適用認定証」を使えば、医療費が今できる最大限まで安くなる
これ以上は、医療機関での会計で医療費は安くならない。
とだけ覚えてもらえればいいです。
計算や区分に関しては保険証を発行している保険者が判定しくれますし、計算については医療機関で行いますので患者さん自身の面倒になることはないと思います。
ここでは限度額適用認定証のざっくりとした概要を説明しました。
繰り返してですが、計算式がわからなくても、とりあえず「限度額適用認定証」があれば、医療費が最大限まで安くなる!ということを覚えてもらえればと思います。
ここで重要ポイントをお伝えしておきます。
注意ポイント
この記事を作成しているのが2024年なのですが、医療機関にマイナンバーカードを提示することで窓口でオンラインで限度額適用を受けることができるようになっています。
つまり、限度額の適用を受けるための面倒な手続きが必要なく、マイナンバーカードを医療機関に提示して、専用の機械で「限度額の取得に同意する」というボタンを押すだけでよくなった、ということです。
また、保険証の提示だけでも、オンラインで確認できたりもします。
※マイナンバーカードであれば、いままで面倒だった限度額適用認定証の手続きなどもしなくても済むので、患者さんの負担もありません。
【医療費のよくある質問Q&A】
次にここでは、医療費に関して患者さんから病院あてによくいただく質問をまとめてみました。
医療費のよくある質問
病院によせられるよくある質問も紹介し回答しますね。
質問「なにも(医療行為)されていないのに入院費が発生するのはおかしいんじゃない!?」
と指摘を受けることがあります。
医療費について、よく勘違いされる場合がありますが、入院しているだけで入院基本料というものが発生します。なので、入院している限り、医療費(診療点数)は毎日発生しています。
患者さんとしてはなにもしていないのに入院費がかかるのはおかしいという意見もあるかもしれませんが、医療現場の立場からは知っておいてほしい部分ではあります。
「前月はまるまる1か月入院していて、今月は15日間しか入院していないのに、前月とあまり入院費が変わらないのはどうして?」
と聞かれることがよくありますが、
限度額は同月内、一定のラインを超えると、どれだけ長く入院していようが早くに退院しようが、同じになります。ある程度の入院期間で医療費の限度額を超えると、それ以降は食事代と自費が増えるだけなので、あまり入院費が変わらない場合があります。
図にするとこんな感じです。イメージがしやすく分かりやすいと思います。
気になる人は画像を見てみてくださいね。
Q、「高額療養費制度」と「限度額適用認定」って違うの?
これについて、ざっくり回答すると
A、両方とも最終的な患者さんの負担は同じです。
ざっくりの違いはお金の動くタイミングです…
「高額療養費制度」→窓口での支払いが高額になる。後から自分で差額払い戻しの手続きを行う。
「限度額適用認定」→窓口での支払いが軽減される。医療機関が限度額の計算を行う。
限度額適用認定証や高額療養費制度については別の動画でも詳しく解説していますので、よかったらそちらも参考にしてみてください。
関連記事≫限度額適用認定証と高額療養費とは?違いをわかりやすく説明
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限度額適用認定証と高額療養費とは?違いをわかりやすく説明
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食事代について詳しく解説
次に食事代についてです。
これはシンプルに食べたご飯代金です。
1食単位で請求します。
例えば、一食460円で1日3食を食べたとしたら、1日あたり1,380円の食事代がかかる、といった感じです。
実際に食事を提供した回数に応じた食事代が請求されます。
実は、イメージないかもしれませんが、食事代も「入院時食事療養費」として医療保険の給付対象なんです。
例えば、本来、食事代は
(※入院時食事療養費(Ⅰ)として計算した場合)
・1食あたり640円
+
・1日あたり特別食加算76円
+
・1日あたり食堂加算50円
合計=1日3食食べるだけで2,046円かかります。
ですが、医療保険の給付対象ですので、患者さんの負担は、1日あたり全部で1,380円ですみます。
ここでもまた
とか
という人もいると思いますので、
ここでは
食事代で覚える事
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医療保険が適用されて食事代も安くなる
-
1食あたりで計算される
と覚えてもらったらいいと思います。
※ちなみに食事代に限度額はありません。提供された食事の回数で請求されますので、これも覚えておいてください。
参考まで実際の食事代はこんな感じです。気になる方は目をとおしてみてもいいかもしれません。
引用:全国協会けんぽ
あと、食事代でわかりにくいのは、「生活療養費がかかるか」という部分です。食事代以外に光熱水費として、費用がかかる病棟があります。
ここら辺はさらにややこしいので、気になる方は過去の動画で解説していますので、そちらを参考にされてください。
関連記事≫【医療事務員にも】入院時食事療養費と入院時生活療養費とは?食堂加算や特別食加算まで違いもわかりやくすく解説
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自費分について詳しく解説
3つ目は、自費についてです。
自費分で発生する費用は必要最低限の医療に必要がないものです。
患者さん個人の希望する内容に応じて金額が変わります。
例えば、個室代や病衣のレンタル費用、テレビ視聴代金等が自費分に該当します。
あと、よく差額ベッド代ともいわれます。
さらに極端な例えでいえば、車のオプションを選ぶように、「オプションが無くても車としては走れるけどあったら便利」といった感じのものです。
医療費の限度額でも説明したように、個人が負担する医療費と食事代の金額は、個人の所得に応じるので最終的にそこまで高くはありませんが、実際の場合は、個室代、差額ベッド代など自費分だけで入院費が高額になることのほうが多いです。
1日3,000円以上する個室代金もあり月換算するとかなり高額ですからね。
※ちなみに、この自費の個室代などの金額設定は医療機関によって違ってきます。
自費分について、私個人的な意見としては、、、
個人でかけている生命保険で「日額10,000円補償」とかの契約内容は、入院中に自分の希望を叶えるためのものに使う分だけで十分、かなと思っています。
例えば、大部屋は絶対に嫌だなと思ったら個室代ぐらいが補充できそうな「1日あたり5,000円で十分かな」といった具合で、自分のライフスタイルや考え方に応じて生命保険のプランも選べばいいのかなと思っています。
※もちろん家族構成や就労状況によってケースは異なりますので、生命保険等はご自身の収入状況に応じて検討されるのが一番だと思います。
入院費の知ってて得する節約術
おまたせしました!
最後に入院費を少しでもお得にする情報をお伝えしていきますね。
お得情報①:多数該当
まずは、多数該当についてです。
過去1年間で3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けた場合(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)は、4ヵ月目から『多数該当』となり、自己負担限度額がさらに軽減されます。
医療機関では、入院時に12ヵ月遡って負担金が限度額を超えているか確認し、多数該当のチェックをしています。
注意ポイント
他の医療機関からの転院の場合、最初の入院から、その患者さんが限度額が何回、超えているかが判断できないため、他の医療機関との通算はしていません。
※ただし、前の医療機関の領収書を持参してもらえたら通算する事もあります。
もし医療機関で通算できない場合は保険証を発行している保険者への申請が必要です。
お得情報②:同月内に転院した場合の限度額
次に同月内に転院した場合の限度額についてです。
限度額は、同月内でも1つの医療機関に“それぞれ”支払わなければいけません。
例えば、
A病院に1/1~1/15まで入院
1/16からB病院に転院~1/31まで入院
といった場合、
A病院とB病院にそれぞれ限度額まで支払わなければいけません。
しかし、あとから領収書をもって保険者へ高額療養費の手続きを行えば、限度額の差額が払い戻しされます。
お得情報③:月の途中で保険証が変わる場合
次に、月の途中で保険証が変わる場合、限度額の通算方法が異なる場合があります。
例えば、
・社保→国保
・同じ協会けんぽでも
協会けんぽ(本人)→協会けんぽ(家族)
月の途中で保険証が変わると、それぞれで限度額がかかるので、患者さんの医療費の負担が増えます。
そして、保険が変わると多数該当もリセットされます。
※前期高齢→後期高齢もリセットされます。
ただし、国保一般→国保前期高齢のように主保険が同じときは通算されます。
なので、できれば保険証は月末か月初めの切り替え(退職とか)がおすすめです。
お得情報④:月初めの退院なら可能であれば月末退院で月をまたがない
もし、月始めに退院予定だけれど、1・2日ぐらいの差で早めに退院できるなら月をまたがないほうがいいです。
理由は月をまたぐと医療費の限度額がリセットされるからです。
こんな感じです。
引用:協会けんぽ
例えば、2月1日に退院予定だと
・1月分 → 限度額いっぱいの支払いが発生
それにプラスで
・2月分の医療費は限度額に達しないので、診療点数分がそのまま発生してしまいます。
1月中に退院してしまえば、どんなに診療点数が高くても限度額までなので、金額が決まっていますが、2月に入ってしまうと、改めて実際に発生した診療点数分がそのまま請求されてしまう、というわけです。
もちろん、退院の可否を決めるのは主治医なので、医師の指示に従う必要はあります。
もし可能であれば退院日の調整を相談してみるのもいいかと思います。
まとめ:基本がわかれば仕組みは同じです
最後にまとめです。
患者さんがイメージする入院費(患者さんが支払う金額)は大きく3つに分けられ、それぞれを合計した金額が「入院費」として請求される金額になります。
入院費の計算方法の簡単な考え方としては、
医療費(診療点数)+食事代+自費分=入院費
といった感じになります。
事前に「入院費はいくらぐらいになります?」という質問に対しては、
ただ、患者さんの負担割合、限度額適用認定証の確認により医療費と食事代はある程度、計算できます。
自費に関しても、その患者さんの希望する環境や、医療機関によって個室代の設定金額も違うので分からない。というのが現場の正直な感想です。
今回の説明を聞いて
と思った人は、とりあえず、「限度額適用認定証」を医療機関に提示すれば最低限の入院費で済みます。
反対に
という方はご自身の所得区分などを計算してみるのもいいかもしれません。
最後に、医療費は年々、変動があります。
今回紹介した限度額も来年、再来年には変更があるかもしれません。
実際にここ10年以内にも限度額は大きく変化しました。
平成27年にも大きな変更がありました。
※こちらの画像は過去のものです
なので、今回の記事で紹介したような入院費の基本的な構造さえ理解していれば、後はその時代に応じた医療費や食事代の計算をしていくだけ、という感じなります。
今回は以上になります。
この記事をきっかけに入院費の仕組みについて理解してもらえたら幸いです。
当ブログでは現役の医療事務員がお得な医療制度の情報や医療事務のリアルな情報をお届けしていますので、よろしくお願いします。
それではまた