医療機関として働いていれば、診療録の保存期間は5年ということは、もはや常識といってもいいほど基本的なことですね。
ただ、その5年というのは実際にはどのように区切りをつけているのでしょうか。
また、実際の保存期間というのはどれぐらいが妥当なのでしょうか。
こういった内容は、療養担当規則にも詳しく書いてあるので、それにのっとり説明していきます。
カルテ保管5年の定義
5年間というのは、診療の完結の日から5年間という意味です。
これは医療法第24条診療録の記載及び保存の二項と療養担当規則9条に規定されています。
診療録については、いずれも診療完結の日から5年間は保存しなければならないことになっています。
法定の保存期間としては、5年を経過したものは破棄してもいいわけですが、医療法施行規則第20条の10号では診療に関する諸記録は過去2年間となっています。
また、療養担当規則9条でも保険診療の療養の給付に関する諸記録は3年間とされています。カルテは別に5年と規定。
とりあえず・・・
5年以上、保管をしておけば問題ないということですね。
実際の保管期間
これらの保存期間は、あくまで法律に基づくものですが実際には、例えば医療過誤訴訟などでは10年以上も前の診療内容について争われることもあります。
つまり、診療録には診療行為の経過を記録するだけでなく、法的証拠書類としての側面を有しています。
そのため、病院によっては永久保存としている医療機関もありますし、医療機関独自に10年20年といった保存年限を決めているところもあります。
法定の保存期間としては5年となっていますが、それ以上の年月、保管する場合は特に問題ないわけです。
だから、”なんかあったときのために、とりあえずとっておく”という医療機関も多いはずです。
私の病院でも、最低10年間は保管しています。
ただし、診療が完結してからではなく『年度ごと』で区切って保管しています。
輸血等の特定生物由来製品使用対象患者
輸血等の特定生物由来製品使用対象患者については、定められた事項を記録しその患者の記録は使用日から起算して少なくとも20年は保存しなければならないとされました。
平成15年5月15日付医薬発第0515011号通知に示されています。
輸血の患者だけ20年の保存年限を決めておくだけでなく、医療現場としてはやはりカルテは20年ぐらいの保存期間を考慮すべきではないでしょうか。
カルテの保管方法
診療録(カルテ)の保存方法として一番妥当なのは、書類関係を段ボールやA4紙ファイルに収納でしょう。
とりあえず、まとめて紙ファイルに綴っておいてから段ボールに入れておくといった感じですね。
私の病院も10年は保管するとなっていますが、10年前のカルテを使用するなんて事は年に1回あるかないかです。
使用頻度の少ない年数のものは、結構ガチガチにして詰め込んでしまっています。
あと、今はどこの医療機関も電子カルテで情報を管理していますので、紙媒体の記録もスキャナなどで保存も簡単にできます。
ただ、スキャンし終わった分は原本として保管しなくてはいけません。
過去のカルテを診断書で使うことがある
基本的には、5年間の保管でよいですが、実務で5年以上経過したカルテを必要とする場合があります。
それは、診断書を作成するときです。
基本的には5年間の保管でOKなので、5年以上前の診療の診断書の依頼がきても
「カルテの保管が5年なので、5年以上前のものは作成できません」と突っぱねることもできますが、実際はそんな事を言う医療機関も少ないと思います。
なので、とても古い期間の診断書の依頼を受けても、いつでも対応できるように多めの期間を設けてカルテを保存しているわけです。
まとめ:迷ったらとりあえず保管しておく
法的な保存期限は決まっているが、実務で、特に診断書関係では5年以上前の記録を使用することが多々あります。
現在では電カルを使用している医療機関が多いので、過去の記録はすぐにみることができます。
そのなかで、電子カルテに入らない(スキャンしない)ような紙媒体のものに関しては、ファイルにしっかり綴る!!
”原本”といのは重要な存在ですので、きちんと保管して管理していくことが重要になってきます。