レセプト時期になると、支払基金や国保連合から査定の通知が届いてきますよね。
ただでさえ、忙しいレセプト時期に査定の通知が来ると少し気持ち的に重くなります・・・
そして、急いで当月分にも査定された同じような事例がないか確認をしていく。
そのような作業に追われる中で、みんな結構見落としていることがあると思うんです。
それは、査定されたときに一部負担金の差額を返金するかどうか、ということです。
もちろん、知っていて返金していないよ。という人もいるかと思いますが、今回は査定で差額が発生した場合に患者へ返金しなければいけないのか?ということを書いていきます。
※関連記事
⇒再審査・減点に対する医療機関の再審査請求の時効はいつまで?
⇒いままで減点(査定や返戻)がなかった項目が突然大量に減点されるようになった理由とは
査定されたら返金しなくてはならない
レセプト審査で、減額査定を受けると患者の支払う一部負担金に過払いが発生します。
こうした場合、原則として差額返還しなければいけません。
その根拠、理由として
厚生労働省は昭和60年2月に内閣法制局の確認を得た次のような見解を示しています。
減点査定による患者負担の過払いは貧乏の不当利得返還請求権に基づき保険医療機関に対し返還を請求できる。
さらにこの結果を受けて、「過払い額の大きいケースについては医療費通知に付記すること」
という通知を昭和60年4月に各保険者に出しています。
このような通知が出ているため、基本的には返金をしなければいけません。
実際の医療機関での対応
そんなことを言っても、医療機関では納得できないこともあります。
医療行為(レセプト請求)の際に使用された薬剤、処方した薬、検査は医学的、臨床学上で適切なものであれば、返金する必要はないのではないかとする考えが多いのも現実です。
あるいは、再審査請求中であり、 結果が判明していないので返金せず、保留しているという医療機関も多いはずです。
多くの医療機関では、患者からの申し出があった時点で検討し、直接治療に携わった医師から説明してもらうことが多いようです。(私の病院でも、医師から直接説明をしてもらっています。)
なぜ医師が直接説明するのか
患者が、医療費通知に付記された返金通知を見て、自分に施された治療が誤りだったのではないか?と、医療機関に照会・問い合わせをしてくる例が多いからです。
最近では、患者さんも保険診療について詳しくなり、賢くなってきています。
インターネットの普及のせいでしょうか。
中途半端に診療の知識がついたことで、自分自身の治療が不適切、医療ミスだったのではないかと疑ってくるんですね。
確かに自分が患者の立場だった、心配で問合せしてしまうと思います。ただし、私は医療費通知書をしっかり見たことがわりませんが・・・
実際の医療現場では、臨床上の問題と保険診療上(レセプト請求上)のルールの在り方の違いについて、患者に理解してもらうことは容易ではないのでトラブルの元になりやすい事例と言えます。
ここに関しては、とても面倒ですが医事がしっかりと患者さんに説明して納得してもらえるようにしていきましょう。
返金する金額
原則的には返金する
実務では返金しない
こんな感じになってると思います。
であれば、どこの医療機関も査定時には返金を行わないことになってしまいますが、すべてがそういうわけではありません。
一部負担金の返金額が1万円以上発生したときにはさずがに患者さんへ連絡して返金を行います。
ただし、あくまで
・手術の手技料間違い
・大幅な診療行為の回数間違い
など、明らかに医療機関の請求間違いであり、こちらに非があるとき、なおかつ金額が大きくなるときです。
保険者からも患者へ連絡が行く
金額が高くなると、直接保険者から患者へ連絡が行くケースがあります。
患者さんから病院宛てで
「役場(保険者)から治療費の返金があるって聞いたんだけど・・・」
と言ってくることがあります。
患者さんも役場から連絡は来たのはいいけど、なんのことかさっぱりわかっていない状況が多いので、医療機関でもなぜ返金するのか説明してあげるようにしましょう。
まとめ
原則と実務での対応は異なってきます。
医療機関としても治療の必要性があって行ったことが査定され、なおかつ、返金まで行わなければいけないなんて納得できません。
それでも、返金に関しては、患者さんにとっては関係のないことかもしれません。
なので、患者さんからの要請があった場合にのみ対応していく、というスタンスで構わないとおもいます。
あくまで、クレームにつながらないように、しっかりと説明できるだけの知識を身に着けていきたいですね。