労災の患者が通院していた場合、すぐに治る軽いケガだったりしたら、1か月ぐらいで治療は終わり、装具・コルセットを作ることもなく治癒若しくは患者さんが自然と来なくなります。
しかし、リハビリで通院していたり、骨折や入院している患者で長期で治療が必要な場合、医師が必要性を認め、装具(コルセットとも言ったりします)を作るケースが出てきます。
その場合、装具の費用は労災へ請求になります。
労災での装具費用の請求方法については、通常(健保使用)の装具を請求をする流れとあまり変わりません。
しかし、労災ではいくつか手続きをしてもうらう必要があります。
今回、その請求の流れを説明していきます。
目次
労災のテキストに載っている請求方法
先に重要な事を書いておきます。
私は下記のテキストに載っている方法で、装具の費用を請求したことはあまりありません。
私の勤めている病院では、だいたい初診から3か月ぐらいの間に初めて装具をつくるケースが多いです。
このようなケースの場合は、大体の場合は労災のテキストの流れとは請求方法が異なってきます。
通常、労災のテキストに載っている流れ
①申請者 労働局へ『義肢等補装具購入・修理費用支給申請書』を提出
②労働局 労働局において内容の審査
申請者の診療担当医医療機関に対して症状照会を実施
※症状照会する項目
コンタクトレンズ、ストマ用装具、浣腸器付排便剤、重度障害者用意思伝達装置
③労働局 労働局長から申請者に『義肢等補装具購入・修理費用支給承諾決定通知書』を送付
④申請者 義肢等補装具業者に義肢等補装具の購入(修理)の注文を行う。
義肢採型指導医において採型指導を実施
※採型指導を実施する項目
義肢、上肢装具、下肢装具、体幹装具、座位保持装置、車いす、電動車いす
⑤業者 義肢等補装具業者が、申請者に義肢等補装具を引き渡す。
以上のような流れで、テキストは書いてあると思います。装具引き渡しまでの流れは以上です。
【費用の精算】患者が費用を負担しない場合
患者さんが装具等の費用を負担せずに受給する方法は下記のようになります。
①申請者 費用請求書に必要事項(受領任意の手続き等)を記入する
②申請者 義肢等補装具業者に費用請求書等を渡す
③業者 義肢等補装具業者が労働局に費用請求書等を提出
④労働局 労働局長が義肢等補装具業者に費用を支払う。
以上になります。
これで患者から費用を徴収することはなくなります。患者さんからしたら、こちらのほうが助かりますよね。
【費用の精算】患者が費用を負担する場合
患者さんが装具の費用を一旦、負担する方法は下記のようになります。
①業者 義肢等補装具業者が申請者に費用を請求
②申請者 義肢等補装具業者に費用を支払う
③申請者 労働局長に費用請求書等を提出
④労働局 労働局長が申請者に費用を支払う
以上の流れになります。
上記で説明した方法が、労災から支給されている手引きなどにも記載があるような流れになります。
実務で労災・短期で装具、コルセットを作成する方法
上記では、テキストに沿った請求方法について書いてあります。
しかし、今回伝えたいのは、あくまで実務での使用頻度が多いであろう請求方法についてです。
ここから、テキストに載っていない重要な事を書いていきます。
装具ができたら装具の費用は全額、患者さんから徴収
理由としては・・・
ケガなどで病院受診をしても、最初の段階では労災と認定されているか未確定のためです。
通常、最初に労災の患者さんが来た段階で『5号用紙』を持ってきてもらうと思います。
このとき、5号用紙というのは、患者若しくは勤め先の会社が作成すればできます。
これは、あくまで会社が独自の判断で労災と判断したことです。
5号用紙を持ってきたからといって、必ず労災認定されるとは限りません。
なぜなら、最終的に労災と認定するのは労働局だからです。
まだ、労災と認定もされていないのに、労働局も装具の申請に対して許可することもできません。
なお、労災に認定されたどうかは、病院も装具業者さんもリアルタイムで把握できるところではありません。
あくまで、本人もしくは会社と労働局の間でのやりとりになります。
病院が労災として治療費を請求できる定義
以上の理由から、受傷後、短期間で装具を作る場合はテキストの流れと異なってくるということです。
装具代を患者本人が支払った後の流れ
- 業務災害の場合 『様式第7号用紙』療養補償給付たる療養の費用請求書
- 通勤災害の場合 『様式第16号の5(1)』療養補償給付たる療養の費用請求書
上記を作成します。
参考記事 労災、様式第7号の記入例と記載箇所
この書類は、簡単に言えば労災の診療や治療以外でかかった費用を、労災から払い戻しを受けることができる書類です。
通院にかかった交通費なんかも、この書類で払い戻しを受けることができるので、病院がよく作成しますよね。
この書類を作成して労働局へ提出することで、全額支払った装具の費用が患者さんへ戻ってくるというシステムです。
アドバイス
ちなみに、この書類(7号様式)の病院で証明する項目で、期間を証明する項目がありますが、この部分は、装具のオーダー日から装着の日付でいいようです。病院によっては、初診から装着の月の末日で記入しているところもあるようです。
患者さんが装具代全額を支払えない場合
装具は全額支払うとなると、何十万になったりと高額になるケースがでてきます。
中には支払えない患者さんもでできます。
もし、そうなった場合に下記のような方法もあります。
会社が立て替える
患者の勤務先の会社が立て替えるケースもあるようです。
会社が支払う場合は『受任者支払い申請書』を提出する必要があります。
ただし、立て替えができる企業は限られています。
月に労災保険料を100万円ぐらい納めている大企業でないと審査が通らないようです。中小企業の場合は適応されないので、やはり患者本人に支払ってもらうしかありません。
しかし、どっちにしてもお金は全額もどってくるので、そこは勤め先の会社と相談して立て替え(労災とかではなく個人間で)てもらうという手もあるようです(患者さんからしたらちょっと言いにくいですが・・・)。
私の経験談
小さい会社で良心的な社長は建て替えをしてることが結構あります。
このときの『様式第7号用紙』の振り込み口座の項目は、患者本人にするか、会社の口座にするかは労基に要相談でした。
なぜ、テキストと違う流れになるのか
労災に認定されるのに時間がかかるということもありますが、テキストに載っているのは治療後も慢性的に装具が必要な場合の手順になっています。
しかし、ほとんどの患者さんは治療初期の1回だけしか装具を作りません。
なので、装具の費用を請求する流れとしては、これだけの作業で終わりになるということです。
まとめ:労災の装具費用の件で困ったら装具業者に相談してみる
労災でも、患者さんによって状況が違っていたりしてわからない部分もでてくると思います。
そのときは、装具業者に相談することをオススメします。
装具業者も、最初に装具の費用は全額支払われるといっても、患者さんのためにもちゃんと申請して払い戻しまで行う義務があると思います。
お互い様という気持ちでいろいろ質問してみるのも勉強になるし、いい経験になると思います。