労災の患者さんが、労災の書類である労働者災害補償保険の様式第8号(休業補償給付支給請求書・休業特別支給金支給申請書、いわゆる休業証明)も持ってきた場合、医療機関側は書類の記載箇所に沿って証明(記入)をしてあげなければいけません。
受付とかでも、頻繁にこの書類を目にすることがあると思います。
医療機関が様式第8号を証明する意味合い
いつからいつまでの期間、病気やケガに対して療養を行っていたため、仕事ができませんでした。この期間は病院に来ており、治療を行っていましたよ。
ということを証明する書類になります。
その証明した期間に応じて、休業補償が発生して患者さんにお金が入ってくるというものですね。
基本的には、テキストにもそういったことって書いてあると思うんです。
でも、実際に作成するにあたり、記入する箇所で分からないところとかが、少なからず出てくるはずです。
初めて作成する場合なんかは特にあるのではないでしょうか。
医療機関が労災の様式8号を作成するにあたり、疑問に感じそうな記載箇所と、基本的な書き方についてまとめてみました。
※動画のほうがいい~という方はコチラも参考にされてください♪
医療機関が記載するのは療養の期間と傷病の経過
項目29の『療養の期間』を証明する場合、ほとんどは患者さんや会社の担当の方、又は代理の社会保険労務士が
「この期間の証明をしてください」と言って依頼をしてきます。
実務でも、依頼のあった期間に合わせて証明すると思います。
※基本的には医療機関が証明するのは下記の部分になります。
たまに患者さんや会社の担当の方で、どの期間を病院に証明してもらったらよいのか、分からずに依頼してくることがあります。
普段、労災に無縁な小さな企業なんかは労災の手続きを行ったことがないのでわからないらしい。
そんな時、療養の期間はどの期間を証明するのかというと
項目19の『療養のため労働ができなかった期間』に合わせて証明をしていきます。
『療養のため労働ができなかった期間』は会社が先に記入していることが多い項目です。
実際に会社を休んでいる期間を記入しているので、会社が管理している休みと病院が証明する療養の期間の相違がなくなり摩擦もなくなると思います。
ただ、項目29は項目19『療養のため労働ができなかった期間』に必ず合わせなければいけないかというと、そういうわけではありません。
病院で実際に療養を行った期間を記入するので、病院が独自に証明してもよいということです。
実際は何ヶ月も続けて証明していくことが多いので、項目19『療養のため労働ができなかった期間』と項目29『療養の期間』が違ってくると管理するほうが大変になってきます。
例えば、両方を異なった期間で証明していた場合に「療養のため労働ができなかった期間」はこの日まで証明したけど
「療養の期間」はどこまで証明したっけ・・・てな感じにもなっちゃうと思います。
だから通常は、期間を合わせて証明しているということです。
会社側の希望と実際の通院日が異なる場合の対応と考え方
基本的には会社側の希望する期間を証明してあげるのですが、たまに実際の通院日とは異なる期間をお願いされる場合があります。
そういった場合はどうしたらいいのでしょうか?
最終通院日以降の期間も証明していいのか?
例えば…
- 初診が2/1
- 最終診察日が2/10
会社側が証明期間を2/1~2/15日で希望している場合、(19)に合わせて(29)(31)も書けるのでしょか?
この場合、病院で証明できるのは、実際に通院が確認できる(実日数がある)2/1~2/10になるのでしょうか?
先生が症状固定等、中止と言ってない限りは2/1~2/15で問題ないのでしょうか?
解答⇒2/1~2/15で問題ないです。
本来の考えとしては、実際の通院日までという考えが正しいです。
しかし!!
例えば
本来は、2/1~2/15の証明だけど薬が2/10に出ていて、それ以降は受診していない場合だったら2/10までしか証明できません。
ただ、2/10以降も受診がないということは症状に変わりはなく現在進行形で加療継続中という判断もできるわけです。
なので、受診日以降の期間もある程度は証明できるという考えです。
さすがに、最終診察日が2/10で3/1~3/31の分を証明してくれとわれたらできません。
初診日以前は証明できない
例えば、
- 当院の初診は 2月1日
- 前医に通院歴あり
の場合、1月分から証明して欲しいといわれたらさすがにできません。
実際に、自院で診察している期間しか証明できませんので注意が必要です。
証明期間は主治医の裁量で証明できたりする
極端な話をしてしまえば…
受診がなくても、主治医が「いいよ、書きますよ~」と証明してくれるのであればOKなわけです。
※さすがにこれは極端な例でまずありえません。
でなぜ、こういった証明をしないのかというと…
例えばの話
受診していないのに証明して、患者が治療せず、遊びまわっていた…
なんて話になったら、証明した医師にも責任問題が発生してきますよね。
こういったトラブルを無くすために本来は実際の通院日までが望ましい、基本的な考えになるということなんですね。
注意ポイント
だけど、それでは証明を依頼する側も、依頼を受ける医療機関側も面倒なので、便宜上は多少の期間は多めに証明してあげていますよといった感じです。
症状固定している場合
基本的には、症状固定を行っているのであれば、医療機関は症状固定の日までしか労災に対しての療養を行っていません。
それ以降の日付を証明することは、おかしなことになります。
なので、項目29『療養の期間』と項目31『療養のため労働することができなかったと認められる期間』については、症状固定日までに合わせるのが妥当と言えるでしょう。
もし、会社側が症状固定したのを知らずに、固定後以降の日付の証明を依頼してきた場合は、いつからいつまでの証明で良いのか確認をした方がいいでしょう。
中止と治癒の違い
項目30『療養の現状』の【治癒、死亡、転医、中止、継続中】と選ぶ項目がありますが、基本的に治療中であれば『継続中』に〇をすると思います。
ここで、症状固定になっていた場合は、『治癒』と『中止』どちらがいいのでしょうか?
個人的には、どちらでもかまわないとしています。
完全に治っている場合であれば、「治癒」でいいでしょう。
まだ、症状は残っているけど、一進一退の状況(いわゆる症状固定の定義)が続いているということであれば「中止」にしておいたほうが無難です。
判断に迷う場合は、中止あたりが妥当かと思いますよ。
療養のため労働することができなかったと認められる期間
項目31『療養のため労働することができなかったと認められる期間』については注意が必要です。
ほとんどの場合は、項目29『療養の期間』に合わせて項目31『療養のため労働することができなかったと認められる期間』も証明するのですが、たまに異なってくる場合があります。
どんな時というと、労働局から医療照会などで問い合わせの文章、書類を書いたときです。
その医療照会の文章の中で『〇月〇日までは労働は不可~、〇月〇日からは労働の制限なく生活可能~』などと証明することがあります。
こんな時には注意すべきです。
つまり、照会文章の中で就労の可否を問われたときに、可能と証明しているにもかかわらず、8号様式のほうでは項目31の期間を就労不可の期間として記入する場合です。
医療照会と8号様式の項目31の期間との、つじつまが合わなくなってしまうということです。
そうならないためにも、医療照会があった場合は『就労の可否』の部分については事務方でも目を通しておいて、証明するときには気を付けるということを頭に入れておいた方がいかと思われます。
私も、過去に上記のように、「医療照会では就労可って書いてあったけど、8号は療養中になってるけどどっちが正しいの?」と問い合わせを受けたことがあります・・・
正直、医療照会の中身は一応目は通すけど、就労の可否は見ていませんでした・・・
労働局も高い費用使って、病院へ医療照会を行っているだけあって、しっかりチェックしているなと改めて感じましたね。
療養のため労働ができなかった期間ぐらいは記入しててもらう
もし項目19『療養のため労働ができなかった期間』の記載が無ければ、これは確認を取って証明をしなければいけません。
たまに、何も記載のない状態(名前もない)状態で依頼をしてくることがありますが、さすがに何の証明をしているのかさえ怪しくなってしまうので、未記入での依頼は作成を避けるべきでしょう。
せめて!!名前ぐらいは記載してから依頼を受けるようにしましょう。
まとめ:医療機関は依頼のあった期間を証明するだけ
様式8号を持ってきた場合、病院側のスタンスとしては依頼のあった分の期間の証明をするということになります。
なので、項目28~31までをしっかり記入していれば問題はありません。
いろいろ聞かれたりすることもあるかもしれませんが、療養に関して以外の部分は、患者の勤務先の会社や労基が管理するところなので、そこははっきり伝えて、向こう(会社と労災患者)で対応してもらうようにしましょう。
また、そのほうが後々、問題もでてこないと思います。
患者さんもこの証明によって休業補償(お金)が発生するので、様式第8号は重要な書類になります。
医療機関も責任を持って、しっかりとした証明書を作っていきたいですね。
※動画もありますので、コチラも参考にしてくださいね~